明けましておめでとうございます。
Blogの更新が滞っておりましたが久々に更新いたします。

2022年を振り返ると、
・米国でインフレが進行し、ピークを迎えた。
・FRBはインフレ対策として、利上げを選択した。
・利上げによって米国の株式市場は下落したものの、円建てで考えるとそれほど下がっていない。ドル高の影響を受けているに過ぎないように見える。

つまり、インフレの影響により、金融引締めが起き、株価が下がると思われましたが、円建てで考えると無風に等しく、比較的平穏な1年に感じました。

<S&P円建てチャート>
2558_2023-01-01_15-11-31

<S&Pドル建てチャート>
SPX_2023-01-01_15-12-31

金融引締めの手法として、FRBが取りうる手段は利上げと量的引き締め(QT)です。2022年はFRBが最大限の利上げを行いました。一方でQTについてはあまり注目されませんでした。

QTはどうなったか?

FRBは、国債などの保有資産を減らす、QTを2022年6月1日から開始しています。計画によると、縮小の上限額は、当初は月475億ドルとしその3カ月後には月950億ドルとしています。2022年度のFRBのバランスシートを見ると、2022年の4月12日の8兆5045億ドルから年末の8兆1445億ドルと3,600億ドル(日本円にして約47兆円)保有資産が減少したことがわかります。

FRB Securities Held

しかしながら一部の保有資産額が減少したとしてもFRBの全体のバランスシートが本当に縮小されているかは疑問が残ります。
なぜならば、保有資産の見合いには、FRBの当座預金あるいはRepo取引といった負債が存在するからです。FRBはこれらの負債に対して4.25~4.5%の付利を行っています。そうすると、負債は年率で4.25~4.5%の速度で増加していくため、QTはそれを上回る速度で無ければバランスシート全体の縮小はしないはずです。
先ほどのバランスシート縮小額で比率を出してみると

3,600億ドル/8兆5045億ドル=4.2%

年率で4.2%の速度で保有資産を縮小したと言えます。一方で、負債は4.25~4.5%で増加していくため、FRBのバランスシート全体は縮小していないと考えられます。
FRBは日本円にして約47兆円を市場から回収した一方で、利息として同額をバラまいたと言えます。つまり、金融引締めは2022年に起きていなかったということです。

結論

インフレがピークを付けたのは間違いなさそうですが、インフレが2%に向け低下することは無いでしょう。金融引締めは起こっていなかったからです。量的緩和下で利上げを行う場合、FRBが付利してばら撒く利息分を考慮に入れるべきですが意図的にそのような議論を避けていると感じます。また、FRBが本気でインフレを退治したければQTに言及すべきですが、声明文で注目されるのはいつも利上げ幅ばかりです。
当ブログはインフレの長期化を念頭に米国長期金利の上昇、ドル円の上昇にスポットライトを当てて今年の投資戦略を考えたいと思います。一方でQTの政策変更に関しては細心の注意を払って観察をしようと思います。

4月28日の金融政策決定会合で、日銀は連続指値オペを明確化し、ドル円は一時131円を超えました。

キャプチャ

悪い円安を避けるために何らかの金融引締めの仄めかしを警戒して、円高方向へ向かっていたドル円相場は予想を裏切られた形になり、急速に円安が進みました。

当ブログでは昨年の2月に日銀の財務状況をもとに、インフレが起きた時に日銀・日本政府が取りうる対策を簡単に解説をしています。当時のブログの内容を理解した人の中にはUSDJPYのロングで利益を得た方もいるかと思います。


当時の米国債の10年物金利は1.4%程度であり、今のような8%を超えるインフレ率ではなかったため、追記をする必要性があると思い、今回のブログを記させていただきます。

変わらず拡大する日銀のバランスシート

日銀のバランスシートは拡大のペースは落としているものの、引き続き肥大化したままです。
国債に関しては、令和2年度の上半期末と令和3年度の国債残高は1.9兆円減少したものの、528兆円もの膨大な国債を保有しています。そして、コロナ関連の緊急融資で貸出金は33兆円増加させております。

しかしながら、注目すべきは世界中で類を見ない、中央銀行による株の買い付けです。日銀は日経平均及びTOPIXの上場投資信託の買い付けにより、日本株の保有額は2兆円増加し、36兆円となりました。

BS

この日銀による上場投資信託の含み益は2021年11月時点で16兆円と言われています。

日銀、ETF購入急減 4~9月2102億円 含み益は16兆円


2021年11月時点での日経平均は28,000円付近でしたので、27,000円付近の最近の相場と大差はありません。日銀の資産には同程度の含み益があると考えてよいと思います。

前回のブログで述べたことは、仮に2%のインフレが起きた時には同程度の2%程度に政策金利を引き上げ、年間10兆円相当の金利を日銀当座預金に預け入れをしている金融機関に支払う必要があるということです。当然、日銀にはその原資がありませんから金利の引き上げはできません。
しかしながら、上場投資信託を売却できるとなれば話は別です。一般的に日銀が買い付けた上場投資信託を売却するとなると、即座に日経平均は暴落し、逆に日銀は債務超過に陥ると言われています。
しかしながら、制御できない円安、インフレが日本を襲ったときには日経平均も制御ができない上昇をするはずです。つまり、その時が日銀が唯一の出口戦略として36兆円の上場投資信託を売却するチャンスなのです。
円安と日経平均はある程度連動しており、米国の株価が下落しているにもかかわらず、年初以来、円安が起こっている日経平均はほぼ横ばいです。

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つまり、日銀にとっては制御できない円安、インフレはまたとないチャンスということです。
昨年度に日銀の財務諸表を分析したときには「まさか」と思いましたが、金融引締めの仄めかしをせずにむしろ金融緩和の継続を宣言した黒田総裁を見て確信をしました。

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日銀は明確な意思をもって円安、インフレに舵を取りました。

今はまだ、制御不能な円安、インフレは起こっていませんが、日銀は今後、円安やインフレを制御することは無いはずです。日本銀行の保有する36兆円の上場投資信託を売却する口実となるまで、異常な円安やインフレは続くと思います。そして、そのことに言及するエコノミスト、市場関係者は今のところいません。

日経平均の暴落を予測して始まった当ブログですが、暴落は当分起こらないと言わざる得ません。
今後は、保有する円の価値が毀損する「通貨毀損バブル」が危惧されますので、保有資産の防衛を一人一人が考える時代になっていると思います。

そのための一つの方法としてドル円ロングがありますが、以下のXM Tradingでは急激な相場の変動に対応し、すぐに口座が開設できます。


日本国債10年金利が急上昇しています。
2月26日時点での金利は0.16%で2018年9月の水準を上回っています。

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これは米国でインフレ期待が強まったため米国債10年金利が急上昇したことが影響しています。
米国債金利は以下のように急上昇をしています。

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もともとインフレターゲットを2%とする異次元の量的緩和を始めた日銀ですが、日銀の財務状況を分析すると日銀はインフレに耐えることができないことがわかります。
以下は日銀の2021年2月時点の貸借対照表です。当座預金として493兆円が計上されています。当座預金とは銀行などの金融機関が日銀に預け入れているお金の事です。現在はこの当座預金には最大で0.1%の金利が付与されていますが、マイナス金利適用部分もあり、実質的に金利は支払われていません。


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仮に、インフレ率が2%になった場合は、493兆円の当座預金に対して2%の付利を行いインフレを抑制する必要がありますが、その場合は年間で9.8兆円の金利を金融機関に支払う必要があります。
この金利に対して日銀のPLを分析すると量的緩和で買い入れた国債からの収入は1.3兆円しかありません。

BOJ PL
日銀が買い入れている国債は長期のものが大半ですが、運用利回りの平均が0.24%しかないためです。
日銀の自己資本は4.2兆円です。当座預金に2%の金利を適用した場合、わずか半年で破綻する計算です。

(1.3兆円×6/12)-(9.8兆円×6/12)=△4.25兆円(半年間での損失)>自己資本4.2兆円

一年間の場合は△8.5兆円の損失です。

単純な計算ですら日銀はインフレに耐えられません。仮にインフレが起きた場合に日銀が取れる手段は以下の2つだと思います。

①国庫から日銀へ資本注入を行う
政府統合論で考えた場合、国庫から日銀へ資本注入をすることが考えられます。赤字財政であることを考えると日本政府が保有する資産を売却しての資本注入が最も現実的かと思います。その場合、手っ取り早く考えられるのが政府保有の株式の売却でしょう。以下が、政府保有株の一覧ですが例えば政府系金融株は公共性が高く、売ることは不可能です。この中で躊躇なく売れるのは日本たばこ株ぐらいかもしれません。また、産業革新投資機構も売却可能でしょう。
その場合、ねん出できる金額は約4兆円であるため、日銀の寿命は半年だけ伸びます。
通信の安全が脅かされますが、NTT株と日本郵政株も全て売ってしまえば、追加で約4兆円の資金調達ができますので日銀の寿命は1年だけ伸びます。

JGOV Shares

②増税をし、消費を抑制することでインフレ対策を行う
政治への関心が薄く、投票率が低い日本ならできる手法です。
この場合のインフレ対策とは、消費増税や所得税の増税、社会保険料の値上げなどでとことん庶民を痛めつけて国民の活動をとことん抑制することです。
思い返せば、景気回復の兆候が表れると日本政府は何度も消費増税を行い、そのたびに日本の成長を抑制してきました。日本政府はこのように意図的にインフレを抑制している可能性があります。

絶望的な日銀の財務状況

2%のインフレターゲットを掲げている日銀ですが、2%のインフレが達成された場合には絶望的な状況となることがお分かりいただけたと思います。
足元では資産バブルが発生してきていますが、2%のインフレに近付いた時にはコロナ対策の予算の回収のための名目で大増税が待ち構えているはずです。

まだまだ、長期金利やインフレ期待は低水準ですが、いずれ来る暴落相場には備えておいた方がいいと思います。

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